★1960年 2代目トヨペット・コロナ 拷問キャンペーン ~ 自動車カタログ棚から 174 | ポルシェ356Aカレラ

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●トヨタ自動車株式会社最高顧問の豊田英二氏(1913年9月12日生れ)が、2013年9月17日(火)に亡くなられました。享年100歳。謹んでご冥福をお祈りいたします。


★戦後、日本の小型乗用車の需要は急激に伸びて1960年(昭和35年)には自動車市場の中心となっていたが、トヨタは初代コロナ(本シリーズ164回目記事参照)では大苦戦を強いられライバルである日産のダットサン・ブルーバードの独走を許していた。 
そこでトヨタとしては設計企画体制も一新して新型コロナの開発を進めた結果、2代目コロナを1960年(昭和35年)3月19日にプレス発表し、次いで4月1日より市販を開始した。発売に先立ち、トヨタは日本で初めてのティーザーキャンペーンを展開して話題となった。それはアメリカのハドソン・ジェットが発表前に行った画期的かつ近代的な宣伝手法で、クルマの形のシルエットだけを出して「アラ、スゴィ!新しくないのは車輪が4つあることだけ!」のコピーを使った新聞広告を出して、人々の気持ちをティーズ(じらす)することで前人気を煽った。2代目の初期のエンジンは初代のP型をそのまま使っていたので車輪の数以外は全て新しいというのは誇大宣伝であったのだが。だが、この前宣伝が功を奏し、コロナの一般向けの発表会は発売直後の4月6日に東京都体育館で開催されたが、新型コロナを一目見ようという10万人もの見物客で超満員となった。

★2代目コロナ(PT20型)の当初の売れ行きは比較的好調で発売の年の12月までの9か月間に2800台以上を受注し(ライバルのブルーバードは1~12月で4700台)、特に営業向け(タクシー用途)以外の自家用向け(一般オーナードライバー)にはかなり好評でブルーバードの80%の台数まで急迫して翌1961年(昭和36年)には形勢が逆転するかに思われた。
ところが、これ以後3年に亘り3代目コロナがデビューするまでのコロナの販売は完全につまづき、ライバル・ブルーバードに更に差を付けられることとなる。ライバル・ブルーバードを上回る多くの新機構が2代目コロナのセールスポイントであったが、それが逆に足を引っ張る結果になるとはトヨタとしては予想外の事態であった。原因は主に2代目コロナPT20型が採用したコイルとリーフを併用したトレーリングアーム式の新しいリアサスペンションにあった。タクシーとして酷使されたコロナPT20型にはトラブルが相次ぎ、あらぬ中傷までが加わって「コロナは弱いクルマ」という一般的なイメージが出来てしまった。このマイナスイメージの元となった不評はタクシー業界から出たものであったが、世間一般にまで広まりコロナの評判は完全に落ちてしまったのである。

★2代目コロナ(PT20型)の設計企画方針は第一が自家用であり、第二が輸出用(2代目コロナの輸出向けは「ティアラ」の別名が名付けられた)、最後に初乗り70円小型タクシーにも使用出来ることであったので、主目的であった自家用としてゆるりと使用する分には当時のオペルレコードによく似た柔らかで美しいデザインに加えて操縦性も他車以上にスポーティーで乗心地も良いクルマであったのだが、タクシーとしての酷使となると大きな凹凸では急激に限界に達してお客がルーフに頭を打つことやボディ自体の鋼性不足が露呈してしまった。このことについては発売前のアメリカで行われた長期テストでは道路が良すぎてトヨタ自身が気づかなかったと言われる。

●ベースボール・マガジン社発行「最新自動車読本」1960年5月号表紙
1959年の本塁打王の大洋ホエールズの桑田武選手と発売間もない2代目コロナ。このクリームルーフにサーモンピンクが2代目コロナのイメージカラー。
$ポルシェ356Aカレラ-読本


★1961年(昭和36年)3月、小型タクシーの規格が拡大されたことを受けて、クラウンに搭載されていたR型1453ccに換装したコロナ1500(RT20型)にマイナーチェンジし、同1961年10月には自家用向けのデラックスグレードを追加した。
翌1962年(昭和37年)3月に不評だったリアサスペンションを一般的なリジッド半楕円リーフスプリングに変更しボディ強度も上げられた。この時、足が弱いと言うイメージを払拭すべく、トヨタは大々的なトーチャー (torture=拷問) キャンペーンを展開した。それはコロナをギリギリまで酷使して堅牢性と耐久性の高さを一般に訴えようというもので、ドラム缶を蹴散らして疾走するコロナ(オマケ動画参照)や崖から転がり落ちてそのまま颯爽と走り出すといったテレビ・コマーシャルが放送された。翌1963年(昭和38年)5月の第1回日本グランプリではC-5クラスの1~3位をコロナが独占し、こうした努力によって徐々にではあったがマイナスイメージの払拭が進められた。このような現実直視と自由競争下の正攻法によるトヨタの粘り強い努力により名声回復が徐々に為され、1964年(昭和39年)9月デビューの3代目コロナRT40系にバトンを渡すと共に一気にライバル・ブルーバードを引き離すことに成功した。

※商用車2代目コロナライン(バン・ピックアップ)は項を改めてご紹介する予定です。


【主要スペック】 1960年 トヨペット・コロナ (PT20型)
全長3990㎜・全幅1490㎜・全高1440㎜・ホイールベース2400㎜・車重940kg・P型水冷4気筒OHV997cc・最高出力45ps/5000rpm・最大トルク7kgm/3200rpm・変速機3速コラムMT・乗車定員5名・電装系12V・燃費16.5km/L・最高速110km/h・販売価格64万8500円


●1960年4月発行 トヨペット・コロナ 本カタログ (A4判・12頁+)
トヨタカタログNo.625。カタログの下の白い封筒は発売時にディーラーでカタログが配布された際のコロナ専用封筒。アナログレコードの紙帯のように、帰宅してカタログを見れば封筒は捨てられてしまうケースが多かっただろう。
$ポルシェ356Aカレラ-604表紙封筒
中頁から
$ポルシェ356Aカレラ-604中(1)
$ポルシェ356Aカレラ-604中(2)階段
$ポルシェ356Aカレラ-604中(3)
初代コロナと同じP型45psエンジン
$ポルシェ356Aカレラ-604中(4)エンジン45ps
スペック掲載頁
$ポルシェ356Aカレラ-604中(5)スペック


●1960年4月発行 トヨペット・コロナ 簡易カタログ (縦12.5×横26cm・12頁)
トヨタカタログNo.627。
$ポルシェ356Aカレラ-簡易表紙
$ポルシェ356Aカレラ-簡易中頁


●1960年4月発行 トヨペット・ティアラ 本カタログ (A4判・輸出向け英文12頁+)
トヨタカタログNo.3006。国内向けの3桁ナンバーとは異なる独自の4桁ナンバーが付されている。中頁は国内向け本カタログとよく似た構成だが、車両は左ハンドルとなり、日本人女性の写真が金髪女性に替えられている。フロントグリルのエンブレムが牛のツノとなりボンネット先端のレタリングは Corona から Tiara に替えられている。
$ポルシェ356Aカレラ-英文表紙
国内版と同じ構図だが人物が金髪女性に替えられている。
$ポルシェ356Aカレラ-英文1中階段
$ポルシェ356Aカレラ-英文2中水着


●1961年3月発行 トヨペット・コロナ1500 本カタログ (A4判・12頁+)
トヨタカタログNo.665。外観はそのまま1500ccエンジンに換装。
$ポルシェ356Aカレラ-613表紙
中頁から
$ポルシェ356Aカレラ-613中頁


●1961年10月発行 トヨペット・コロナ1500 デラックス/スタンダード 本カタログ (A4判・16頁)
トヨタカタログNo.605。3桁のカタログナンバーは発行順のはずが、このカタログでは印字ミスなのかナンバーが若返っている。デラックスでは初めてフロントグリルを変更した。
$ポルシェ356Aカレラ-6110表紙
中頁から
$ポルシェ356Aカレラ-6110(1)中
ダッシュボード
$ポルシェ356Aカレラ-6110(2)中室内


●1962年3月発行 トヨペット・コロナ1500 デラックス/スタンダード 本カタログ (縦25×横26cm・18頁)
トヨタカタログNo.C-05C。この時期から3桁のカタログナンバーではなくなった。リアサスを平凡なリーフに変更。外観上はフロントグリル中央に短いクロームの横バーが加わった。この表紙のカタログは1年半の間に一見同じようで内容が異なるものが3種類発行されている。
$ポルシェ356Aカレラ-623表紙裏表紙
中頁から
$ポルシェ356Aカレラ-623中(1)
$ポルシェ356Aカレラ-623中(2)
後輪サスを一般的なリーフに変更
$ポルシェ356Aカレラ-623中(3)後輪リーフ


●1962年11月発行 トヨペット・コロナ1500 デラックス/スタンダード 本カタログ (縦25×横26cm・18頁)
トヨタカタログNo.C-05D。表紙からNEWの文字が消えた。ドイツ・ザックス社のオートマ「サキソマット自動クラッチ」付をデラックスグレードに追加。
$ポルシェ356Aカレラ-6211表紙
中頁から
$ポルシェ356Aカレラ-6211中(1)
2ペダルのサキソマット追加
$ポルシェ356Aカレラ-6211中(2)サキソマット


●1963年6月発行 トヨペット・コロナ1500 デラックス/スタンダード 本カタログ (縦25×横26cm・18頁)
トヨタカタログNo.C-05G。5月の第1回日本グランプリのC-5クラスでコロナ1~3位を独占したことを受けて表紙に優勝の文字が入り日本グランプリ・ウィナーの金色のシールが貼られた。ファッション・アクセサリーとして少々意図不明の「コロナ・ワッペン」なるものが新発売され、中頁のクルマのグリルと男女にこのワッペンが付き、1962年3月発行版と比較すると裏表紙のイラストで描かれた女性の腕にもワッペンが追加されている。
ポルシェ356Aカレラ-636表紙裏表紙ワッペン
中頁から
フロントグリルと背後の男女に奇妙なコロナワッペンが付いている。
$ポルシェ356Aカレラ-636中ワッペン人と車


●1963年9月発行 トヨペット・コロナ1500 デラックス/スタンダード 本カタログ (縦25×横28cm・16頁)
トヨタカタログNo.PAC44-2。2代目コロナ最後のマイナーチェンジでフロント左右のスモール&ウインカーが丸から楕円に変えられた。内装も大幅に変えられた。
$ポルシェ356Aカレラ-639表紙
中頁から
$ポルシェ356Aカレラ-639中(1)
クラウンと同じトヨグライド(オートマ)追加
$ポルシェ356Aカレラ-639中(2)トヨグライド車
モデル末期にもかかわらずダッシュボードを一新
$ポルシェ356Aカレラ-639中(3)室内一新



★オマケ(その1): モデルペット7番1/42スケール 1960年トヨペット・コロナ
当時定価170円。ダイキャスト製。旭玩具製作所が1960年7月に発売。初版は内装なし。シート付のNo.7Sは1962年4月発売。
$ポルシェ356Aカレラ-モデルペット(1)
$ポルシェ356Aカレラ-モデルペット(2)


★オマケ(その2): 大盛屋チェリカフェニックス28番 1/40スケール 1964年トヨペット・コロナ1500DX
当時定価350円。アンチモニー製。1963年10月発売。画像は2ndモデルでフロントスモールライトが楕円の最終1964年式。1stとしてフロントスモールライトが丸い1963年式も出ている。これは都内のリサイクルショップの100円コーナーで発見したもの。
$ポルシェ356Aカレラ-大盛屋(1)
$ポルシェ356Aカレラ-大盛屋(2)


★オマケ(その3): 旭玩具 1/18スケール 1960年 トヨペット・コロナ
当時定価:都内180円・地方最低売価200円。全長22.5cm。旭玩具品番3555。1960年8月発売。
$ポルシェ356Aカレラ-アサヒ(1)
$ポルシェ356Aカレラ-アサヒ(2)
$ポルシェ356Aカレラ-アサヒ(3)


★オマケ(その4): バンダイ 1/15スケール 1960年 トヨペット・コロナ
当時定価:全国売価330円。全長27cm。バンダイ品番841。バンダイが先に発売していたオペルレコードのボディプレス金型を改修してコロナにでっち上げたバンダイには珍しい安直な製品だが細部は実車に即したディテールに変えられている(同時期のバンダイ製タテ目のセドリックも同じくオペルレコードの金型を改修して発売されている)。
$ポルシェ356Aカレラ-バンダイ(1)
$ポルシェ356Aカレラ-バンダイ(2)
$ポルシェ356Aカレラ-バンダイ(3)


★オマケ(その5): 米澤玩具(ヨネザワ) 1/12スケール 1960年 トヨペット・コロナ
当時定価:不明(調査中)。全長32cm。米澤品番:不明。2代目コロナのスケールモデルとしては最も大きなモデル。
$ポルシェ356Aカレラ-米澤(1)
$ポルシェ356Aカレラ-米澤(2)
$ポルシェ356Aカレラ-米澤(3)


★オマケ(その6): SSSインターナショナル商事 1/28スケール 1960年 トヨペット・コロナ
当時定価:不明(100円程度?)。全長14cm。1960年代初めにポルシェ356、シトロエンDS、ロールス・ロイス、VWビートル、タテ目セドリック、310ブルーバード等をマッチボックスのような箱サイズ統一でリリースしていたTINY GIANTシリーズの一品。出来は悪いが可愛らしいモデル。
$ポルシェ356Aカレラ-サンエス(1)
$ポルシェ356Aカレラ-サンエス(2)
$ポルシェ356Aカレラ-サンエス(3)


★オマケ(その7): 三和模型 1/30スケール 1962年 トヨペット・コロナ1500DX プラモデル
当時定価:不明(調査中)。モーター付の豪華キット。
$ポルシェ356Aカレラ-三和プラモ


★オマケ(その8): 東京プラモ 1/30スケール1962年 トヨペット・コロナ1500DX プラモデル
当時定価:不明(調査中)。三和模型倒産後に金型が東京プラモに流れ再販されたもの。箱絵のイラストも三和のものをほぼ流用している。
$ポルシェ356Aカレラ-東京プラモ


★オマケ(その9): 緑商会 1/67スケール程度 1961年 トヨペット・コロナDX プラモデル
当時定価:不明(30円位?)。当時の駄菓子屋の店先で売られたであろうチープキット。トミカサイズより小さく最近流行のコンビニコーヒーのおまけのミニカーのようなミニサイズプラモ。
$ポルシェ356Aカレラ-緑商会


★オマケ(その10): 1962年トヨペット・コロナ トーチャー(拷問)キャンペーン テレビCM
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